舞台のうえの歌舞伎の女形は、まるで本物の女性のようです。
まぎれもなく男性が演じているはずなのに、不思議ですね。
歌舞伎はその400年の歴史の中で培われてきた独特の「型」があります。
女形の動きも、そういった型が細部に至るまで指導されているのです。
歩くときは重心を前におき、やや前のめりになるつもりで動くと、幼い雰囲気になります。
また、その際「舞台に脳天を見せる」つもりで歩くそうです。
お客さんのほうに向かってちょっと小首をかしげるかたちになるので、
これも娘らしさを演出する型の一つです。
若い女性役とは逆で、重心を後ろに置きます。体が少し重そうにみえ、貫禄が出るので、
商人の女将さんや一家をとりしきる女房の役を演じる上で大切な動きです。
そのほか、恋人同士の役でもその男女がまだ結ばれていない場合、
立役の役者さんは女形の役者さんと腰を近づけないように演技するそうです。
顔と顔を寄せあうことはあっても、腰のあたりがくっついていないと、
二人がまだ初々しい関係にあることが雰囲気として伝わってきます。
長年連れ添った夫婦の場合などはその逆で、
顔と顔が特に近づいていなくても腰の部分がくっついていると、
自然と夫婦らしくみえてきますから、おもしろいですね。